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デザイン型人材とは?イノベーションを起こすために不可欠なデザインスキル

2023-04-26
人材育成
#基礎知識

「デザイン型人材」は、モノをつくる職能を持ったデザイナーだけを限定的に示すのではありません。本記事では、「Creativity(デザイン)」のスキルに強みのある人材としてのデザイン型人材に必要な考え方や姿勢のマインドセットと、ユーザーや社会の課題に対して取り組むための必須スキルについて解説します。

デザイン型人材とは何か

BTCトライアングル

イノベーションを生み出すことができる組織となるためには、「Business」「Technology」「Creativity」の3つの領域が統合してつながっていることが重要です。ビジネスの観点とテクノロジーの観点、そしてデザインの観点のいずれも欠けることなく、チームの中で統合して存在することで新たなイノベーションを起こすことができます。

デザイン型人材

「デザイン型人材」は、モノをつくる職能を持ったデザイナーだけを限定的に示しているのではなく、「Creativity(デザイン)」のスキルに強みのある人材を示しています。「人間中心」「共創的」「反復的」「包括的」「持続的」の5つのマインドセットを持ち、人を巻き込み先導し、共に創ることができる力の「共創力」、抽象的な問題やニーズから課題を特定し解決する力の「問題解決力」のスキルでユーザーや社会の課題に対して取り組むことができる人材です。

デザイン型人材のマインドセットとスキルセット

マインドセット

デザイン型人材として必要な考え方や姿勢には、以下の5つがあります。

デザイン型人材のマインドセット
1. 人間中心:まずは人を起点に考える
2. 共創的:知恵を出し合い、共に創ろう
3. 反復的:一方通行ではなく、サイクルを回そう
4. 包括的:人と仕組み全体を捉えよう
5. 持続的:環境や社会への影響を考えよう

1. 人間中心:まずは人を起点に考える

人間中心設計とは、人間の行動や思考を理解し、使いやすくするための知識や手法を活用し、ユーザーが触れるプロダクトやサービスを設計するという考え方です。プロダクトやサービスをつくるときには、この人間中心設計を念頭に置き、ユーザーの気持ちや状況、思考への理解を深めていきます。

2. 共創的:知恵を出し合い、共に創ろう

価値共創とは、ユーザーがプロダクトやサービスの利用後に得られる「体験としての価値」のことを指します。企業は多様な価値を提案しますが、その価値を最終的に決めるのはユーザーです。企業とユーザーが一緒になってプロダクトやサービスの価値を共創していきます。

3. 反復的:一方通行ではなく、サイクルを回そう

デザインは一方通行の直線的なプロセスではなく、実装のために探索・改善・検証のプロセスを反復し、より良い状況をつくることが重要です。ユーザーの課題やニーズを探索し、改善と検証を重ね、完成形に近い状態に進化をさせていきます。

4. 包括的:人と仕組み全体を捉えよう

ユーザーはさまざまな文脈や関係性のもとに、プロダクトやサービスを利用します。そこにはユーザー自身の上司や同僚、家族など取り巻く人や所属する組織の状況が強く関与しています。プロダクトやサービスをつくるときには、取り巻く利害関係者や環境を俯瞰して捉えることが重要です。

5. 持続的:環境や社会への影響を考えよう

持続可能性(サスティナビリティ)とは、社会全体のシステムに目を向け、俯瞰的な視点で社会や環境への影響を考慮するという考え方です。持続的なサービスを実現するためには、特定の分野や人に焦点を当てるのではなく、システム全体を捉え、根本的な問題に対処できるような仕組みや設計を行う必要があります。

スキルセット

デザイン型人材のスキルセットは「共創力」「問題解決力」の大きく2つのスキルが存在します。

デザイン型人材のスキルセット
・共創力:人を巻き込み先導し、共に創ることができる力
・問題解決力:抽象的なニーズから課題を特定して解決する力

共創力:人を巻き込み先導し、共に創ることができる力

共創力は人を巻き込み先導し、共に創ることができる力で、「推進力」「キャスティング力」「ファシリテーション力」の3つに分けることができます。

推進力
プロジェクトの目的やビジョンを提示し、関係者を巻き込みながらプロジェクトを推進する力です。推進力を養うことで、軸となる目的に常に立ち返りながら方向性を提示していくことが可能となり、迅速に合意形成を図ることができるようになります。
キャスティング力
ビジネスとテクノロジーの知見を兼ね備え、問題解決のプロセスに最適な人材を集め、共創活動を行う力です。キャスティング力を養うことで、プロジェクトに応じて必要な人事案の要件の抽出が可能となり、必要な知見を持つメンバーを巻き込んで共創活動ができるようになります。
ファシリテーション力
プロジェクトの関係者の知恵とやる気を引き出し、深い納得に裏付けられた合意形成を行う力です。ファシリテーション力を養うことで、多角的な観点で問いかけを行い、自身の意見とメンバーの意見を相互に確認しながら議論を進めることが可能となり、質の高い合意形成ができるようになります。

問題解決力:抽象的なニーズから課題を特定して解決する力

問題解決力は抽象的な問題やニーズから課題を特定し解決する力で、「洞察力」「構造化力」「分析力」「可視化力」「創造力」の5つに分けることができます。

洞察力
表面的な情報から本質的な情報までを見抜くことができる力です。洞察力を養うことで、具体的な事象にとらわれずに顧客の潜在的なニーズや課題を見抜き、新しい気づきを得ることができるようになります。
構造化力
まだ全体像が明らかになっていない抽象的な事象を理解し、構成要素と構成要素間の関係を構造的に物事を整理する力です。構造化力を養うことで、問題の原因に対して優先順位をつけた適切な対処が可能となり、チーム内での情報共有やコミュニケーションを円滑にすることができるようになります。
分析力
目に見えている情報を収集・整理し、正しく理解する力です。分析力を養うことで、大量の情報郡から注力すべき特徴的なニーズや課題を発見したり、それを起こしているメカニズムを見抜くことができるようになります。
可視化力
当事者の頭の中にあることを見える化し、周囲にそれを正確に伝える力です。可視化力を養うことで、問題点や課題の発見と把握が可能となり、チーム内で共有することで改善のための対策を効果的に行うことができるようになります。
創造力
最適解・革新的な解を生み出す力です。創造力を養うことで、最適な解を導き出すための必要な機能の抽出が可能となり、実現難易度や効果などの軸を意識した解の検討ができるようになります。

まとめ

本記事では、デザイン型人材に必要な考え方や姿勢のマインドセットと、ユーザーや社会の課題に対して取り組むための必須スキルについて解説しました。デザインが社会で果たす役割も多様化している現在、「Creativity(デザイン)」のスキルはモノをつくる職能を持ったデザイナー以外にも求められています。今回記載したデザイン型人材のマインドセットやスキルセットを、ぜひ人材育成のポイントとして役立ててみてください。

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