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プロジェクトをスムーズに進行するためには?ファシリテーションとUX/UIデザイン

2023-05-24
組織デザイン
#スキルアップ

プロジェクトをスムーズに進行するためには、どのような手段が有効でしょうか。関係者の知恵とやる気を引き出し、深い納得に裏付けられた合意形成を行うことができるファシリテーションは活用したい有効な手段のひとつです。本記事では、ファシリテーションの基本や必要なスキル、UX/UIデザインでの活用方法を解説します。

ファシリテーションとは

ファシリテーションに必要なコアスキル

ファシリテーションとは、関係者の知恵とやる気を引き出し、深い納得に裏付けられた合意形成を行うことです。ファシリテーションには、以下の6つのコアスキルが必要となります。

  • 説明力:打ち合わせ参加者に対してわかりやすく情報を伝えることができる力
  • 場の観察力:それぞれが発している情報をもとに今の場がどうよう状況なのかを把握する力
  • 即興力:想定していた内容にとらわれず、状況に応じて柔軟に振る舞う力
  • 情報編集力:複数の情報を組み合わせて議論をまとめあげる力
  • 場のホールド力:明確な目標や目的に対してその場を支え、コントロールする力

ファシリテーションの基本

ファシリテーションを行う際に基本となる、5つのポイントを解説します。

ファシリテーションの基本
目的を明確にすること
議論の優先順位を明確にすること
発散と収束を完全に切り替えること
様々な角度から問いを投げかけること
構造化/言語化/可視化を行い合意形成すること

目的を明確にすること

ファシリテーションを行う場が、具体的に何を達成するための場なのかの目的を明確にしましょう。可能性を模索する「発散」の場なのか?何かを決めに行く「収束」の場なのか?といったその場の役割も明らかになります。

議論の優先順位を明確にすること

目的を達成するために、最低限その場で達成しなければならないことは何かを明確にしましょう。目的を達成するためのファシリテーションのプロセスや時間配分を設計することができるようになります。

発散と収束を完全に切り替えること

「関係者の知恵とやる気を引き出し、深い納得に裏付けられた合意形成を行うこと」は、「発散し、収束すること」です。これはデザイン思考での「ダブルダイアモンド」で捉えることができます。ファシリテーションをしているときは、今が議論がどのフェーズにいるのかを常に意識し、発散をする思考と収束させる思考を完全に切り替えることを意識しましょう。

発散の際は、「いいね!」と相手の発言に共感を示すことから会話をはじめてみるなど、とにかく可能性を出すことに思考を振り切ることで、意見を出しやすい雰囲気づくりをすることができます。

様々な角度から問いを投げかけること

ファシリテーションでは関係者の知恵とやる気を引き出します。ファシリテーションを行う側が関係者へ伝えることよりも、相手に問いを投げかけることを重視しましょう。特に、UXデザインの文脈では、下記のポイントを意識して「問い」を設計します。

  • 相手の行動の全体像を時系列で理解すること
  • 相手/ユーザが達成したいことを理解すること
  • 相手/ユーザが苦労していることを理解すること

また、様々な視点から問いを投げかけることで、相手の状態をより立体的に理解することができるようになります。

問いの投げかけ例
・行動(どんなことをしている?前後の行動は?)
・目的(何のために?)
・関係者(誰とやりとりをしている?)
・場所(どこで?)
・情報(何を見ている?どんな情報を扱う?)
・方法(何を使っている?どのように使う?)
・苦労(どんなことが一番大変?)

構造化/言語化/可視化を行い合意形成すること

深い納得に裏付けられた合意形成へとつなげるため、多角的に相手から引き出した情報は様々な手段で要約を行います。

構造化 + 言語化

相手から入手した断片的な情報を一つの全体として頭の中で統合し、それに対する自分の理解を要約や具体例として言語化し、相手に伝えることで認識の整合を行うことができます。

構造化 + 言語化例
・要約:つまり・・・ということですか?
・具体例:例えば・・・ということですか?

構造化 + 可視化

相手から入手した情報をグルーピングし、それらを分ける軸を洗い出して可視化します。また、情報を時系列で並べ、一連のプロセスを整理して可視化する方法も有効です。相手から入手した情報をマッピングしていくことで、概念として頭の中で分散していたものを整理・可視化し、互いの理解を揃えることが可能になります。

ファシリテーションとUX/UIデザイン

サービスやプロダクトを通してユーザーの体験をデザインするUXデザインと、ユーザーがサービスやプロダクトをスムーズに使えるように設計するUIデザインでは、以下のポイントを意識してファシリテーションを行いましょう。

UXデザインにおけるファシリテーション

  • 議論が課題を見つける段階では、ユーザーの課題や価値といった、抽象的だが本質的な部分の話に集中をする
  • 議論が解決案をつくる段階に移ったあとは、具体アイデアを論理的な根拠とともに説明し、相手が意思決定できる状態にする

UIデザインにおけるファシリテーション

  • 議論が課題を見つける段階では、例えばUIデザインの軸となるプロダクトのコンセプトや、ユーザーの価値観の言語化といった、抽象的だが本質的な部分の話に集中をする
  • 議論が解決案をつくる段階に移ったあとは、論理的にUIデザインの根拠を説明し、相手が意思決定できる状態にする

ファシリテーションのスキルを伸ばす3つのスキル

ファシリテーションのスキルをより伸ばすために深く関係する、構造化力・言語化力・可視化力の3つのスキルをご紹介します。

ファシリテーションのスキルを伸ばす3つのスキル
・構造化力
・言語化力
・可視化力

構造化力

構造化力とは、まだ全体像が明らかになっていない抽象的な事象を理解し、構成要素と構成要素間の関係を構造的に物事を整理する力です。物事を構造的に理解するためには、具体的に理解した物事から一歩目線を引いてその全体像を理解することが重要です。「具体で理解したものを一度抽象化してみる」「点ではなく面で物事を捉える」とも言えるでしょう。

構造化力を伸ばすためのアクション例
・上司からの具体的な指示の背景にある目的を言語化してみる
・相手に何かヒアリングをする時、その周囲情報も合わせてヒアリングする(前後の行動、見ている情報、関わっている人など)

言語化力

自分の考えであれ、相手の考えであれ、何かの事象であれ、それが本質的に何を意味しているかを見抜き、言葉にする力が言語化力です。とにかくアウトプットの量を増やすことが、スキルを磨くために重要です。

言語化力を伸ばすためのアクション例
・相手の話していたことを一度自分の言葉で言い直し、合意形成をする
・頭の中で思った気づきを文章にして書き出す

可視化力

可視化力とは、当事者の頭の中にあることを見える化して周囲にそれを正確に伝える力です。可視化する際には、特定の目的を果たすために目を向けるべきポイントや指標、範囲、流れなどを標準化したフレームワークが有効です。状況や目的に合わせて、適切なフレームワークを活用できるように自分の中の引き出しを増やし、アウトプットするサイクルを回すことが重要です。

可視化力を伸ばすためのアクション例
・考えを整理するためのフレームワークの引き出しを増やす
 例) 4象限マトリクス/ロジックツリー/サービスブループリント

まとめ

本記事では、ファシリテーションの基本や必要なスキル、UX/UIデザインでの活用方法を解説しました。ファシリテーションは日々の会議や打ち合わせでも必須となる重要な技法です。ぜひ本記事を参考にして、より円滑なプロジェクト進行のためにファシリテーションのスキルを身につけてください。

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