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UX改善に必要な知識とスキルとは?確実に身につく社内教育の導入プロセス

2023-06-13
組織デザイン
#プロセス

成功するビジネスやサービスには、UX(ユーザー体験)が大きく影響します。良いUXは顧客の満足度を引き上げて評価を高め、ビジネスやサービスの成長を促します。UXを改善したい場合、その過程で必要となる知識やスキルを習得し、それを組織内で持続的に実践する手法を確立することが必要です。本記事では、UX改善に必要な基礎知識とスキル、社内教育の導入プロセスと組織の仕組みづくりについて解説します。

UX改善に必要な知識とスキル

UX改善に必要な基礎知識

UXデザインは、サービスがユーザーにとってどのように機能し、どのように感じるかを理解して改善するためのプロセスです。UXデザインを改善するために必要となる基礎知識には、主に以下のようなものが挙げられます。基礎知識は、具体的なスキルを身につけるための土台となります。

UX改善に必要な基礎知識

UCD(ユーザーセンタードデザイン)
ユーザーのニーズ・課題・目標を中心に設計を行うアプローチ

ユーザビリティとアクセシビリティ
ユーザビリティ:サービスが使いやすいかどうかを評価するための基準
アクセシビリティ:全てのユーザーがサービスを使用できるかどうかを評価するための基準

IA(情報アーキテクチャ)
情報を構造化し、理解しやすくナビゲートできるようにするフレームワーク

ビジュアルデザイン
デザインの要素がどのように見え、どのように配置され、相互に関連しているかを理解するためのガイドライン

インタラクションデザイン
ユーザーとサービスの相互作用を理解し、設計するためのガイドライン

UX改善に必要なスキル

UXデザインを改善するために必要となるスキルには、主に以下のようなものが挙げられます。ユーザーの真のニーズを理解し、それに基づいた改善策を立てるためにこれらのスキルが不可欠です。

UX改善に必要なスキル

ユーザーリサーチ
ユーザーのニーズ・目標・行動パターン・習慣などを理解するためのスキル

ワイヤーフレームとプロトタイピング
デザインの初期段階でアイデアを視覚化し、サービスのビジュアルと機能面からのテストをするためのスキル

ユーザビリティテスト
サービスが実際のユーザーにとってどれだけ使いやすいかを評価するためのスキル

コミュニケーションとコラボレーション
アイデアを明確に伝え、チームメンバーやステークホルダーと効果的に協力するためのスキル

プロジェクト管理能力
プロジェクトの一連のタスクを計画・組織・実行し、時間とリソースを効果的に管理するためのスキル

社内教育の導入と組織の仕組みづくり

UX改善に向けた社内教育の導入プロセス

UX改善に向けて、従業員やチームメンバーが知識やスキルを習得するためには、社内教育が不可欠です。社員自身がスキルを身につけることで、組織全体のパフォーマンスを高めることができます。ここでは、UX改善に向けた社内教育の導入プロセス例をご紹介します。

ステップ1:要望の把握と教育目標の設定

まずは、社内メンバーや関係者の要望や、現状の課題を把握しましょう。UX改善に関心を持つメンバーがいるのか、どのような知識やスキルが不足しているのかを明確にします。

次に、要望をもとに教育の目標を設定します。何を学び、どのレベルまでスキルを向上させたいのか、具体的なゴールを決めましょう。要望に応じて、UXデザインの全体的な理解を深めることもあれば、特定のツールや手法に焦点を当てることもあります。

ステップ2:カリキュラムの作成と学習の実施

設定した教育目標に基づいてカリキュラムを作成し、内容や必要なリソースを選定しましょう。目標に合わせて、必要な知識とスキルを基礎から応用まで段階的に学べるように柔軟にカスタマイズできることが理想です。また、カリキュラムは、UXの定義やUCDのプロセスからユーザーリサーチ、情報設計、インタラクションデザインなど、UXデザインの主要な領域をカバーすることが推奨されます。

次に、教育の実施を計画します。セミナーや研修、オンライン学習、書籍の共有、ワークショップ、プロジェクトベースのディスカッションなど、組織の状況や社内の要望に応じて最適な学習方法を組み合わせて実施しましょう。

基礎知識共有のための実施例
UXデザインの基本概念とその重要性を全員が理解することから始めましょう
セミナー/研修
UXデザインの専門家を招いての講演や自社のUXデザインの経験者が知識を共有する
オンライン学習
UXデザインのオンラインコースを利用して各自のペースで学び、コースの進行状況や学習成果を定期的に共有する
書籍の共有
UXデザインに関する良書を社内で共有し、ディスカッションをする
実践的スキル教育のための実施例
具体的なスキルとテクニックを学び、実際のプロジェクトで応用する機会を設けましょう
ワークショップ
実践的なワークショップを開催し、参加者が手を動かしてUXデザインの流れを学ぶ
具体的なテーマ例)ユーザーリサーチの方法、ユーザーペルソナの作成方法、情報設計の基礎、ワイヤーフレーム作成のテクニック など
プロジェクトベースのディスカッション
実際のビジネス課題をベースにしたディスカッションを経験者と初心者が混ざったチームで行い、より実践的な視点を鍛える

ステップ3:実務での実践と継続的な学習の実施

学んだ知識やスキルを実践に活かす機会を提供します。プロジェクトやチームの活動から実際の課題に取り組み、フィードバックを受けることでメンバーの成長を促します。また、プロジェクトの成果物やフィードバックなどを通じて学習の成果を評価することも重要です。成果が目標に達していなければ、カリキュラムや学習方法を見直しましょう。

また、UXデザインは常に進化している分野です。最新トレンドやツールの知識、スキルを更新するための学習機会を継続的に提供するようにしましょう。

長期的なUX改善を支える組織の仕組みづくり

長期的なUX改善を支えるためには、組織文化の醸成とシステムの構築が必要です。これらの両輪で組織全体がUX改善に向けて動き続けることが可能となります。その結果、持続的な品質向上を実現し、ビジネスの成功を支えることができるようになるでしょう。

組織文化の醸成:失敗を恐れない文化

失敗を恐れない文化の醸成は、新たなアイデアやアプローチの探求を促し、クリエイティビティとイノベーションを加速させます。チーム全体が積極的にアイデアを出し合い、成長と改善に取り組むことができる環境を作ることが重要です。

失敗を恐れない文化の醸成のポイント

・失敗を学びの機会と捉える
 失敗は成長の機会であり、新たな知見や教訓を得るチャンスです。失敗を怖がるのではなく、挑戦と学びの機会として捉えましょう。

・リスクを取る姿勢
 組織がリスクを許容する姿勢を持つことが重要です。リスクを取りながら前進し、新たなアイデアやアプローチに挑戦できる環境を整えましょう。

・オープンなコミュニケーション
 失敗を共有し、オープンに議論しましょう。メンバー同士が率直に意見を交換できる環境を作ることが大切です。

・リーダーシップの重要性
 リーダーが失敗を受け入れ、積極的に挑戦と学習を促す姿勢を示すことが重要です。リーダーが失敗を評価し、その経験を共有することで、他のメンバーも積極的に挑戦する意欲を持つようになります。

・フィードバックと学びのサイクル
 失敗から得られるフィードバックを受け入れ、次に活かすための学びの循環を確立しましょう。失敗から学んだ教訓を共有し、改善に活かすことで、持続的な成長と改善を実現します。

システムの構築①:メンターシップ制度

UXデザインの経験者をメンターとして指名するメンターシップ制度は、社員一人一人がUX改善の意識を持つための第一歩です。メンターを通してユーザー体験の重要性が強調され、その価値を組織全体に伝えることができます。また、UXを学ぶ初心者がメンターに直接質問したり、フィードバックを得たりすることで、初心者は理論だけでなく実践的な知識も合わせて得ることができるようになります。

システムの構築②:知識の共有や教育の循環

教育や学習を通じて得た知識やスキルは、一人だけが持つものではなく、組織全体で共有し、継承するべきものです。そのためには、知識の共有や教育の循環が重要となります。これらの取り組みにより、組織全体でのスキル再現性を確保し、一人一人がUX改善に対する理解を深めることができます。

知識の共有・教育の循環の施策例
定期的な勉強会の開催、新入社員への研修プログラム、ノウハウのドキュメント化、知見の体系化や品質を監修する担当者/チームの選定 など

まとめ

本記事では、UX改善に必要な基礎知識とスキル、社内教育の導入プロセスと組織の仕組みづくりについて解説しました。UX改善には知識とスキルの獲得が不可欠です。社内教育を通じて必要な能力を育み、組織全体での取り組みを促進しましょう。失敗を恐れずに挑戦し、持続的な改善を行うことで、より優れたUXを提供し、ビジネスの成功につなげることができます。ぜひ本記事を参考に、UX改善のための社内教育に力を入れてみてはいかがでしょうか。

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